冬の朝、リビングの窓ガラスが結露でびっしょり濡れている。サッシの下にはうっすら黒いカビ。窓を何とかしようと施工店に相談すると、内窓にしますか、カバー工法で窓ごと替えますか、と聞き返される。どちらも断熱リフォームなのに、見積もり額は倍近く違うこともあります。
中古戸建てを買ってリノベーションしたとき、窓は私がいちばん悩んだ場所の1つでした。カタログには性能の数字が並んでいますが、その差が毎日の暮らしでどう効くのかは書いていません。実際に住んでみて分かったのは、窓選びの後悔は性能の数字よりも、開け閉めの手間や窓の見た目、古いサッシの不具合といった、数字に出ない部分から生まれやすいということです。
カバー工法と内窓は、どちらが上という関係ではありません。今の窓の状態と、何に困っているかで答えが変わります。断熱と結露、防音、使い勝手、後悔しやすい点、費用と補助金の順に比べ、最後にどちらを選ぶべきかを読者のタイプ別にまとめます。
カバー工法と内窓、何が違う?
カバー工法は古い窓を新しい窓に取り替える工事で、内窓は古い窓を残して室内側にもう1つ窓を足す工事です。窓が1つのままか、2つになるか。この違いが、使い勝手から費用、補助額まで、ほとんどすべての差につながっています。
カバー工法は、今ある窓枠を壁から外さずに残し、その上から新しい枠をかぶせて、サッシとガラスを丸ごと新品にする工法です。壁を壊さないので、外壁や室内の壁紙を補修する工事がいりません。YKK APのマドリモは、1窓あたり約半日でリフォームが終わると案内しています。
内窓は、今の窓の室内側の窓枠に、もう1つ窓を取り付ける工法です。二重窓とも呼ばれます。外の窓には手を付けず、窓と窓の間にできる空気の層で熱と音を伝わりにくくします。LIXILのインプラスは1窓あたり約60分から取り付けられるとしていて、工事の手軽さではカバー工法を上回ります。
ちなみに、もう1つの方法として、壁を壊して窓枠ごと外すはつり工法もあります。外壁の補修を伴うぶん費用も工期も大きくなるので、窓の大きさを変えたい場合や、外壁の張り替えと同時に工事する場合の選択肢と考えてよいでしょう。3つの工法の費用相場は窓・サッシリフォームの費用相場の記事でまとめています。
2つの工法の違いを表にまとめました。

| 比較項目 | カバー工法 | 内窓 |
|---|---|---|
| 工事の仕組み | 古い枠の上に新しい枠をかぶせ、サッシとガラスを新品にする | 今の窓の室内側に窓を足して二重にする |
| 工事時間の目安 | 1窓あたり約半日、マドリモの場合 | 1窓あたり約60分から、インプラスの場合 |
| 窓の開け閉め | 1回で済む | 2枚開ける必要がある |
| ガラス面の大きさ | 新しい枠の分だけ小さくなる | 変わらない。窓台の奥行は減る |
| 古いサッシの不具合 | サッシごと新品になり解消する | 外の窓はそのまま残る |
| 防音 | 気密が上がる分は改善する | 空気層ができ効果が大きい |
| 補助額の例 | 9万2,000円 | 3万4,000円 |
補助額は、先進的窓リノベ2026事業で、戸建て住宅の1.6㎡以上2.8㎡未満の窓にSグレードの製品を使った場合の金額です。詳しくは後の費用と補助金の章で説明します。
断熱と結露、効果が大きいのはどっち?
断熱の効果は、Sグレード以上の製品を選べばどちらも大きく、差はそれほど開きません。違いが出るのは結露の出方です。カバー工法はサッシの枠まで新しくなるので、枠のまわりの結露まで減らしやすい一方、内窓は外の窓と内窓の間で結露が残ることがあります。
窓の断熱性能は、熱貫流率という数字で表します。窓1㎡あたりから1時間に逃げる熱の量のことで、小さいほど熱が逃げにくい窓です。先進的窓リノベ2026事業では、この数字が1.5以下の窓をSグレード、1.1以下をPグレードとして補助の対象にしています。どのグレードに入るかは製品とガラスの組み合わせで決まり、事業の公式サイトで型番ごとに確認できます。
では、なぜ結露の出方が変わるのか。結露は、室内の暖かく湿った空気が冷たい面に触れて、水滴になる現象です。築20年を超える戸建てに多いアルミサッシは、アルミが熱をとても伝えやすいため、冬は枠そのものが外の冷たさを室内側に運んでしまいます。
カバー工法で樹脂や樹脂とアルミの複合の枠に替えると、この冷たい枠が室内側からなくなります。ガラスだけでなく枠の結露も減るのは、この理由です。
内窓の場合、室内側の窓は暖かく保たれるので、部屋から見える面の結露はぐっと減ります。ところが外の窓はアルミのまま残ります。内窓の隙間から湿った空気が少しずつ入り込むと、外の窓の室内側で結露し、窓と窓の間に水がたまることがあるんです。量は以前より少なくなるものの、ゼロにはなりにくい。ここは内窓を選ぶ前に知っておきたい点です。
正直に言って、断熱の体感は工法よりも製品のグレードで決まる部分が大きいと感じます。どちらを選ぶにしても、補助の対象になるSグレード以上から選ぶのが近道です。
防音と開け閉め、毎日の使い勝手はどう変わる?
防音を重視するなら内窓、毎日の開け閉めを楽にしたいならカバー工法が有利です。この2つは片方を取るともう片方をあきらめる関係にあり、どちらを優先するかが工法選びの大きな分かれ目になります。
内窓の防音効果が大きいのは、窓と窓の間にある空気の層が、音の振動を伝わりにくくするからです。YKK APの内窓ウチリモは、外からの音を15dB下げると案内しています。15dBは、人の耳には音の大きさが半分より小さくなったように感じられる差です。幹線道路や線路の近くの家では、この差が寝室の眠りやすさに直結します。
カバー工法でも、古いサッシの隙間がなくなって気密が上がるぶん、音は入りにくくなります。ただ、窓は1枚のままなので、内窓ほどの効果は期待しにくいでしょう。
一方で、内窓は窓を開けるたびに2枚を開ける必要があります。換気のたびに、洗濯物を干すたびに、ひと手間増える。これが意外と効いてきます。毎日何度も開け閉めする掃き出し窓や、キッチンの換気用の窓では、この手間がストレスになりやすいのです。
カバー工法なら窓は1枚のままなので、開け閉めは今までどおりです。さらにマドリモのように、開かないFIX窓を開く窓に変えられる製品もあり、風通しを良くしたい家ではこれが決め手になることもあります。
カバー工法で後悔しやすいポイントは?
カバー工法の後悔で多いのは、窓が小さく見えるようになったこと、費用が思ったより高かったこと、そして家の立地によっては使えなかったことの3つです。どれも工事の前に確認すれば避けられるので、順番に見ていきます。
- ガラス面が小さくなる。 古い枠の内側に新しい枠を取り付けるので、枠が太くなった分だけガラスの見える面積が減るからです。小さな窓ほど減り方が目立ちやすく、採光や眺めを大事にしている窓では、完成後に窮屈に感じることがあります。
- 費用が内窓より高くなる。 サッシとガラスを丸ごと新品にするうえ、枠の取り付けにも手間がかかるからです。補助額は大きいものの、自己負担額でも内窓より高くなることが多いと考えておきましょう。
- 防火の規制がある窓では使えないことがある。 防火地域や準防火地域で、隣の家に近い窓には、防火の認定を受けた窓が求められる場合があるからです。カバー工法の製品が使えるかどうかは窓ごとに変わるので、見積もりの段階で施工店に確認しておくと安心です。
- 外観の印象が少し変わる。 外側にも新しい枠のカバー材が見えるので、窓まわりの見た目が以前と変わるからです。サッシの色は選べるので、外壁の色と合わせて決めると違和感が出にくくなります。
窓のサイズを測る採寸も、カバー工法では重要です。既存の枠がゆがんでいると新しい枠がうまく納まらず、隙間風や開け閉めの重さにつながります。現地調査で枠の状態まで見てくれる施工店を選ぶことが、後悔を防ぐいちばんの近道です。
内窓で後悔しやすいポイントは?
内窓の後悔で多いのは、開け閉めの手間、窓と窓の間の結露と掃除、そして古い外の窓の不具合が直らないことの3つです。どれも内窓の仕組みから生まれるので、自分の家の窓に当てはまるかを先に考えておくことが大切です。
- 開け閉めが二度手間になる。 窓が2枚になるので、換気や出入りのたびに2回開ける必要があるからです。毎日使う窓ほど気になりやすく、寝室の腰高窓のようにあまり開けない窓では気になりにくい傾向があります。
- 窓と窓の間の掃除が増える。 外の窓と内窓の間にホコリや虫がたまり、掃除する面が増えるからです。結露が出る家では、カビを防ぐためにこまめに拭く必要も出てきます。
- 外の窓の不具合はそのまま残る。 内窓は外の窓に手を付けないため、鍵の壊れやゆがみ、戸車のすり減りはそのままだからです。古い窓の建て付けが悪い家では、内窓を付けても外の窓を開けるたびに引っかかる状態が続きます。
- 窓台が使いにくくなる。 窓枠の奥行の中に内窓のレールが入るので、窓台に物を置くスペースが減るからです。窓枠の奥行が足りない場合は、ふかし枠という部材で室内側に枠を継ぎ足すため、カーテンレールとぶつかることもあります。
窓リフォームを経験した人の声は、窓リフォームの後悔をまとめた記事にも集めています。どの後悔も、工事の前に今の窓の状態と使い方を振り返っておけば、かなりの部分が防げるものばかりです。
費用と補助金はいくら違う?
窓の本体価格は、同じくらいの大きさで比べるとカバー工法が内窓の2倍近くになります。ただ、補助額もカバー工法のほうが大きいので、差はある程度縮まります。最終的な自己負担額は、施工費を含めた見積もりで比べることが大切です。
メーカーが公表している参考価格で比べてみます。どちらもLow-E複層ガラスの引違い窓で、消費税と施工費は含みません。
| 製品 | 工法 | サイズ | 参考価格 |
|---|---|---|---|
| LIXIL リプラス 居室仕様 | カバー工法 | 幅1,650mm×高さ1,100mm | 17万1,400円 |
| YKK AP ウチリモ | 内窓 | 幅1,700mm×高さ1,200mm | 9万7,800円 |
内窓のほうが少し大きいサイズなのに、価格は6割ほど。カバー工法が高くなるのは、外の雨風に直接さらされる窓として、サッシとガラスに加えて枠や外側のカバー材まで一式そろえる必要があるからです。内窓は室内側に付くので雨風への備えが軽く、そのぶん部材も簡単になります。
補助金は、環境省の先進的窓リノベ2026事業が使えます。戸建て住宅でSグレードの製品を使った場合、1か所あたりの補助額は次のとおりです。
| 窓の大きさ | カバー工法 | 内窓 |
|---|---|---|
| 特大 4.0㎡以上 | 15万6,000円 | 7万6,000円 |
| 大 2.8㎡以上4.0㎡未満 | 12万4,000円 | 5万2,000円 |
| 中 1.6㎡以上2.8㎡未満 | 9万2,000円 | 3万4,000円 |
| 小 0.2㎡以上1.6㎡未満 | 6万円 | 2万2,000円 |
カバー工法の補助額は、内窓のおよそ2倍から3倍です。上の参考価格の2つの窓はどちらも中のサイズなので、本体価格の差約7万4,000円に対して、補助額の差は5万8,000円になります。本体の差の大部分を補助が埋める計算です。施工費はカバー工法のほうが高くなりやすいので、実際の差はこれより開くと考えておきましょう。
補助の条件も押さえておきます。
- 補助の上限は1戸あたり100万円です。窓の数が多い家でも、この金額を超える部分は自己負担になります。
- 1回の申請で補助額の合計が5万円以上になる工事が対象です。内窓の小さな窓1か所だけでは届かないので、何か所かをまとめて工事するのが前提になります。
- 内窓は、SグレードかPグレードの製品だけが対象です。カバー工法は、Aグレードでも補助が出ます。
- 申請は、登録された施工店が行います。受付は遅くとも2026年12月31日までで、予算に達すると早く締め切られます。公式サイトでは、2026年9月30日時点で予算の26%まで申請が進んでいます。
制度の全体像は、省エネリフォーム補助金の比較記事で整理しています。
我が家はどっち?判断の順番
迷ったときは、今の外の窓に不具合があるか、何に一番困っているか、その窓をどれくらい開けるかの順で考えると、答えが自然に絞れます。窓ごとに答えが変わることも多く、1軒の中で工法を使い分けるのも立派な選択です。
- 外の窓に不具合があるかを確かめる。 鍵が掛かりにくい、戸車がすり減って重い、すき間風が入るといった不具合があるなら、カバー工法が有力です。内窓では外の窓が直らず、不具合を抱えたまま二重窓にすることになるからです。
- 一番困っていることを決める。 外の音が一番の悩みなら内窓、枠まわりの結露やカビが一番の悩みならカバー工法が向いています。空気層で音を止める内窓と、冷たいアルミ枠をなくすカバー工法では、得意な悩みが違うからです。
- その窓をどれくらい開けるかを考える。 1日に何度も開ける掃き出し窓や勝手口まわりの窓はカバー工法、ほとんど開けない窓は内窓が向いています。開け閉めの手間は、開ける回数が多いほど毎日の負担として積み上がるからです。
- 予算と補助額を合わせて比べる。 窓の数が多く予算を抑えたいなら内窓、補助を最大限に使って窓そのものを新しくしたいならカバー工法が候補になります。自己負担額は施工費によって大きく変わるので、両方の見積もりを取らないと本当の差は分からないからです。
5つの視点で評価すると、次のようになります。

たとえば、リビングの大きな掃き出し窓はカバー工法で窓ごと新しくし、寝室や子ども部屋の腰高窓は内窓で断熱と防音を足す。こうした組み合わせは珍しくありません。わが家でも、全部を同じ工法にそろえる必要はないと分かってから、ずいぶん気が楽になりました。
外の窓のガラスだけを替える方法と迷っている場合は、二重窓と複層ガラス交換の比較記事も参考になります。
カバー工法が向いている人、内窓が向いている人
ここまでの比較を、読者のタイプ別にまとめます。自分の家の窓と暮らし方に近いほうを選べば、大きく外すことはありません。
こんな人はカバー工法がおすすめ
- 古いサッシの鍵や戸車が傷んでいる人です。サッシごと新品になるので、断熱と一緒に不具合も片付くからです。
- 枠まわりの結露やカビに悩んでいる人です。冷たいアルミ枠が室内側からなくなり、枠の結露まで減らしやすいからです。
- 毎日よく開ける窓を断熱したい人です。窓が1枚のままなので、開け閉めの手間が今までと変わらないからです。
- 補助金を最大限に活用したい人です。1か所あたりの補助額が内窓の2倍から3倍あり、大きな窓ほど補助が手厚くなるからです。
こんな人は内窓がおすすめ
- 外の音に悩んでいる人です。窓と窓の間の空気層が音を伝わりにくくし、防音の効果が大きいからです。
- 窓の数が多く、費用を抑えたい人です。本体価格が安く工事も短時間なので、家じゅうの窓を一度に断熱しやすいからです。
- 外の窓に大きな不具合がない人です。まだ使える外の窓を生かしたまま、断熱性能だけを足せるからです。
- 防火の規制がある窓を断熱したい人です。外の窓に手を付けないので、防火の認定を受けた窓をそのまま残せるからです。
どちらの工法でも、施工店によって得意不得意があり、提案が片方に偏ることがあります。カバー工法と内窓の両方で見積もりを出してもらい、自己負担額と工事の内容を並べて比べてみてください。それが、後悔しない窓リフォームへのいちばん確かな一歩です。
よくある質問
Q. カバー工法と内窓、断熱効果が高いのはどちらですか?
A. Sグレード以上の製品を選べば、どちらも断熱効果は大きく、大きな差は出にくいです。違いが出るのは結露で、カバー工法は冷たいアルミ枠がなくなるため枠まわりの結露まで減らしやすく、内窓は外の窓と内窓の間に結露が残ることがあります。
Q. カバー工法をすると窓はどれくらい小さくなりますか?
A. 古い枠の内側に新しい枠を取り付けるので、枠が太くなった分だけガラスの見える面積が小さくなります。減り方は製品と窓の大きさで変わり、小さな窓ほど目立ちやすくなります。採光が大事な窓は、現地調査のときに完成後のガラスの大きさを施工店に確認しておくと安心です。
Q. 先進的窓リノベ2026の補助額はカバー工法と内窓でどれくらい違いますか?
A. 戸建て住宅でSグレードの製品を使った場合、カバー工法は1か所6万円から15万6,000円、内窓は2万2,000円から7万6,000円で、カバー工法がおよそ2倍から3倍です。上限は1戸あたり100万円、1回の申請で合計5万円以上が条件で、受付は遅くとも2026年12月31日までです。
Q. 内窓とカバー工法を1軒の中で組み合わせてもよいですか?
A. 組み合わせて問題ありません。よく開ける掃き出し窓や不具合のある窓はカバー工法、あまり開けない窓や音が気になる部屋の窓は内窓というように、窓ごとに工法を選ぶ方法は珍しくありません。どちらも先進的窓リノベ2026事業の補助の対象です。
Q. 準防火地域の家でもカバー工法は使えますか?
A. 窓の位置によっては使えないことがあります。隣の家や道路に近い延焼のおそれのある部分の窓には、防火の認定を受けた窓が求められる場合があり、カバー工法の製品が使えるかは窓ごとに変わります。内窓は外の窓をそのまま残すので、防火の規制がある窓の断熱によく選ばれます。

