リフォームの相談をしていると、「補助金が使えるはずなんですが、何があるかよくわからなくて」という声を本当によく聞きます。業者に言われるまで知らなかった、調べようとしたら制度が多くて混乱した、申請しようとしたら期限が終わっていた——そういったパターンが驚くほど多いです。
2026年度現在、省エネリフォームに使える国の補助金の柱は3つあります。環境省の「先進的窓リノベ」、国土交通省・環境省が共同で運営する「みらいエコ住宅」、経産省の「給湯省エネ」です。どれも最大で数十万〜100万円規模の補助が受けられる制度ですが、対象になる工事も、申請できる住宅の条件も、申請のタイミングも、それぞれ異なります。3制度をまとめて比較して使えるようにするのが、この記事の目的です。
特に中古住宅を購入してリフォームを計画している方に読んでいただきたい内容です。補助金は「知っていれば使えた」という性質のものが多いからです。
まず整理する:2026年度の省エネリフォーム補助金は3制度ある
3制度の概要を先に一覧で示します。詳細は後の各セクションで解説しますが、まず「何が何なのか」だけ頭に入れておいてください。

上の図で見ると、3制度はそれぞれ守備範囲が違うことがわかります。「窓」に特化しているのが先進的窓リノベ、「外皮+設備」をセットで改修する場合に使えるのがみらいエコ住宅、「給湯器の交換」に絞ったのが給湯省エネです。ターゲットが明確に分かれているので、自分のリフォーム内容によってどれを使うかが決まります。
そして、ここが重要なポイントなのですが——3制度は原則として「同じ工事箇所への重複申請がなければ」併用できます。つまり、工事の組み合わせ次第で、補助金の合計が200万円を超えることもあります。後半でシミュレーションも紹介しますので参考にしてください。
先進的窓リノベ2026事業:窓の断熱改修に最大100万円
補助グレードと補助額の仕組み
窓の断熱改修に特化した補助金で、2026年度は「Sグレード(熱貫流率Uw値1.5以下)」以上の製品を対象としています。
ここで注意していただきたいのが、2026年度からAグレード(Uw値1.9以下)が補助対象外になったことです。2025年度まではAグレードの一般複層ガラス(ペアガラス)も補助の対象でしたが、2026年度からはより高断熱なSグレード以上に絞られました。内窓を検討する際は、Low-Eガラス(複層)か真空ガラスを選ぶことが前提になります。
補助額は工事内容・窓の大きさ・グレードによって変動しますが、住宅1戸あたり最大100万円まで受け取れます。内窓を複数箇所に設置すれば、補助額も積み上がる仕組みです。
正直なところ、この制度はコストパフォーマンスが高いと思っています。内窓1枚あたりの工事費は3〜8万円前後が相場で、補助金によって実質負担が半額以下になるケースも珍しくありません。冬の寒さや結露に悩んでいる中古住宅オーナーにとって、窓リフォームはまず最初に検討すべき工事です。
2026年度の着工要件は「2025年11月28日以降の着工」で、申請受付は2026年3月下旬から開始予定です(2026年3月時点)。予算は1,125億円が確保されていますが、予算上限に達した段階で締め切りになるため、早めに動いた方が安全です。
内窓の選び方と補助金の関係
内窓については、このサイトでもインプラス vs プラマードU(ウチリモ)の比較記事を公開しています。LIXILのインプラスとYKK APのウチリモ(旧プラマードU)はともにSグレードに対応した製品ラインがあり、先進的窓リノベの補助対象になります。どちらを選ぶかは機能面・見た目面の好みになってきますが、補助金的にはどちらでも大きな差はありません。
サッシ全体の交換(外窓のリプレイス)を考えている場合は、樹脂サッシ vs アルミ樹脂複合サッシの比較記事も参考にしてください。断熱性能の違いが補助グレードにも直結します。
こんな人に向いています
- 窓の寒さ・結露だけを解消したい(他の大規模リフォームは不要)
- 中古住宅の断熱改修を、まず窓から始めたい
- 工事箇所が窓に限られるので、工期が短く(1〜2日程度)予算も絞りやすい
- 平成11年以降の建物でも申請できる(後述のみらいエコ住宅は古い建物限定)
みらいエコ住宅2026事業:外皮×設備のセット改修が条件
対象住宅に「築年の縛り」がある
みらいエコ住宅は国土交通省・環境省が共同で運営する補助金で、対象住宅に大きな縛りがあります。「平成11年(1999年)基準未満の住宅」に限られるのです。
つまり、1999年ごろ以前に建てられた、いわゆる「旧断熱基準」の住宅が対象です。これは中古住宅購入者にとって非常に関係が深い条件で、築20〜25年以上の中古住宅であれば対象になる可能性が高いです。
補助額は40万円〜最大100万円で、幅があるのは「改修前後の性能向上の程度」によって変わるからです。省エネ性能をどこまで引き上げるかによって補助率が変動します。着工は2025年11月28日以降の工事が対象です。
必須工事の「組み合わせルール」を理解する
みらいエコ住宅の特徴は、単体の工事では申請できないことです。以下の必須工事を組み合わせる必要があります。
必須工事は「開口部断熱 or 躯体断熱」+「エコ設備(高効率給湯器・太陽光・蓄電池など)」の組み合わせが基本になります。
具体的には——
窓の断熱改修(内窓の設置や外窓の交換)と、エコキュートやハイブリッド給湯器の設置を同時に行うのが、最も組み合わせやすいパターンです。外壁の断熱材を加える「躯体断熱」と組み合わせることもできます。外壁リフォーム(塗装や張り替え)を検討中の方は、断熱材の追加工事と組み合わせることで対象要件を満たせる可能性があります。
気をつけていただきたいのは、「どれか1つの工事だけ」では申請できない点です。補助金の条件を満たすために必要のない工事を追加してしまうと、本来の工事予算が膨らんでしまいます。補助金の条件に合わせてリフォーム計画を組み立てるのではなく、まず必要な工事を決めてから「みらいエコ住宅の条件を満たすか」を確認する順番が正しいやり方です。
こんな人に向いています
- 築20〜25年以上の中古住宅を購入し、本格的な断熱リフォームを計画している
- 窓・外皮・設備を一度にまとめてリフォームしたい
- 省エネ性能の大幅な向上を目指す「フルリノベ」寄りの計画
逆に言えば、比較的新しい(2000年代以降の)中古住宅の場合、みらいエコ住宅は使えません。その場合は先進的窓リノベや給湯省エネを組み合わせることになります。
給湯省エネ2026事業:給湯器の交換で最大21万円
機器別の補助額
経産省が運営する給湯省エネは、3制度の中で最もシンプルな仕組みです。省エネ型の給湯機器に交換することで補助が受けられます。
補助額の目安は以下の通りです。
- エコキュート(電気式ヒートポンプ給湯器):7万〜10万円
- ハイブリッド給湯器(エコキュート+ガス給湯器の組み合わせ):10万〜12万円(条件次第で最大14万円)
- エネファーム(家庭用燃料電池):17万円(最大21万円)
エネファームは補助額が大きいですが、本体価格も高く、導入コスト全体で考えると費用回収に時間がかかる面もあります。現実的にコストパフォーマンスが良いのはエコキュートかハイブリッドで、特にガスから電気への切り替えを検討している方にはエコキュートが向いています。
2026年の新要件:「昼間自家消費機能」が追加
2026年度から新たに、エコキュートには「昼間の余剰太陽光電力を自動で使う機能」(昼間自家消費機能)が要件として加わりました。
つまり、補助対象になるエコキュートの機種が絞られることになりました。太陽光発電システムを持っていない住宅でも、この機能を持つ機種であれば申請できる場合がありますが、機種選定の際は事前に確認が必要です。業者任せにせず、見積もり段階で「2026年度の補助対象機種か」を確認しておくことをおすすめします。
こんな人に向いています
- 既存の給湯器が古くなってきて、交換タイミングを検討している
- 太陽光発電システムとの組み合わせで電気代を抑えたい
- 他の大規模リフォームはせず、給湯器だけを省エネタイプに切り替えたい
- 先進的窓リノベと組み合わせて、より多くの補助金を受けたい
3制度の「組み合わせ」が最強:シナリオ別シミュレーション
3制度は「同一工事箇所への重複申請がなければ」基本的に併用できます。これを活用すると、1回のリフォームで受け取れる補助金の合計が大きく変わります。

パターンA:先進的窓リノベ+給湯省エネ
最も組み合わせやすいパターンです。内窓の設置で窓リノベを申請し、同時にエコキュートに交換して給湯省エネも申請します。窓工事で50万〜80万円、給湯で7万〜10万円の補助が受けられるイメージです。この2制度は申請窓口・条件が独立しているので、比較的手続きがシンプルで済みます。
パターンB:みらいエコ住宅+給湯省エネ
みらいエコ住宅の「エコ設備」として高効率給湯器を入れた場合でも、給湯省エネを別途申請できる可能性があります。ただし同一工事への重複はNGなので、みらいエコ住宅の補助対象とした工事と給湯省エネの対象が重ならないよう、事前に業者と確認しておくことが必要です。
パターンC:3制度の同時活用
条件が揃えば——古い住宅の外皮断熱+内窓設置(みらいエコ住宅)、追加の窓(先進的窓リノベ)、エコキュート(給湯省エネ)——という組み合わせも理論上は成立します。補助金の合計は200万円を超える規模になりえます。ただし複数制度を同時に申請する場合は、工事内容の振り分けが複雑になるため、経験のある業者に相談することをおすすめします。
申請で失敗しないための3つの鉄則
補助金の制度を知っていても、申請の段取りを間違えると受け取れなくなります。3つだけ、鉄則を覚えておいてください。
1. 着工前に「登録業者」を通して話を進める
3制度はいずれも、施工業者が代理で申請する仕組みをとっています。つまり、補助金の申請は業者側の作業で、住宅オーナーが直接申請する制度ではありません。大事なのは「登録業者(事業者登録店)」に依頼することです。補助金を受けるためには、制度ごとに事業者登録をした業者でなければなりません。知り合いの業者に頼んだら登録していなかった——というケースは実際によくあります。工事の依頼先を決める前に、登録業者かどうかを確認してください。
2. 工事の着工タイミングに気をつける
補助金ごとに「この日以降の着工であること」という条件があります。2026年度はいずれも2025年11月28日以降の着工が要件です。それ以前に工事が完了している場合は対象外になる可能性があります。特に中古住宅の購入直後に急いでリフォームしたケースで「あの工事は補助金に間に合わなかった」ということが起きやすいので、購入後のリフォームスケジュールを組む段階から補助金のタイミングを確認しておくと良いでしょう。
3. 予算は先着順。早めに動く
補助金には予算の上限があります。先進的窓リノベは1,125億円と大きな予算が確保されていますが、それでも年度途中で受付が終了することはあります。「まだ余裕があるだろう」と思って先延ばしにすると、申請期間が終わってしまうことも。少なくとも工事開始の2〜3ヶ月前には業者に相談を始めておくのが安全です。
中古住宅オーナーが補助金を最大活用するための手順
補助金の全体像を踏まえて、具体的に何から動けばいいかを整理しておきます。
STEP 1:住宅の築年を確認する
まず自分の家がいつ建てられたかを確認します。1999年以前かどうかで、みらいエコ住宅の対象になるかが変わります。登記簿や売買契約書で確認できます。
STEP 2:やりたい工事を先に決める
補助金ありきで工事内容を決めると、本来不要な工事を追加させられるリスクがあります。まず「何が不満で、何を直したいか」を自分で整理してから、それが各補助金の対象になるかを確認する順番が正しいです。
STEP 3:各制度の登録業者に見積もりを依頼する
1社だけに相談すると、どの補助金を使うかの選択肢が狭まりやすいです。窓リフォーム専門業者、リフォーム総合業者など複数社に相談し、「どの補助金が使えるか」「申請実績があるか」を確認しながら比較するのが望ましいです。
STEP 4:工事スケジュールと申請スケジュールを確認する
着工日、申請受付開始日、予算の消化状況——これらをすべて確認した上で工事の日程を確定させます。業者が慣れていれば自然にやってくれますが、念のため「申請は問題なくできますよね?」と一言確認しておくと安心です。
中古住宅のリフォームは工事の範囲が広くなりがちで、補助金の活用余地も大きいです。ただし「補助金の申請にベテランかどうか」は業者によって大きく差があります。施工の腕と同時に、補助金対応の実績もヒアリングしておくと良いでしょう。
まとめ:あなたに合う補助金はどれ?
最後に、読者のタイプ別に整理してまとめます。
窓の断熱から手をつけたい → 先進的窓リノベ一択 費用が比較的かからず、工期も短く、効果が実感しやすいです。補助金も手厚い。まず内窓の設置から始めて、断熱効果を確認してから次の工事に進むアプローチが現実的です。
1999年以前の中古住宅を本格リフォームしたい → みらいエコ住宅を軸に組み立て 窓・外皮・設備をまとめてリフォームするなら、みらいエコ住宅が最も補助額が大きくなりやすいです。業者との打ち合わせ段階から「みらいエコ住宅の条件を満たす工事内容にする」という方針を共有しておきましょう。
給湯器の交換タイミングが来た → 給湯省エネ+他制度との組み合わせが正解 給湯省エネ単体でも申請できますが、どうせなら内窓や断熱改修を同時に行って先進的窓リノベも組み合わせると、トータルの補助金が増えます。「給湯器の交換タイミング」を断熱リフォームの切り口にするのは、なかなか賢い考え方だと思います。
補助金制度は毎年内容が変わります。2026年度について確認した情報をもとに記事を書いていますが、申請前には必ず各事業の公式サイトで最新情報を確認してください。業者に任せきりにせず、自分でも一度公式ページを見る習慣をつけると、損をしにくくなります。
よくある質問
Q. 補助金はいつ受け取れますか? A. 工事完了後に業者が申請し、審査が通ったタイミングで振り込まれます。工事完了から数ヶ月かかるのが通常です。先払いではなく後払いになるため、工事費の支払いは先に自己負担で済ませる必要があります。
Q. 賃貸住宅(オーナー)でも申請できますか? A. 先進的窓リノベと給湯省エネは賃貸住宅でも申請できます(工事発注者=オーナー)。みらいエコ住宅は居住用住宅が対象で、賃貸物件の扱いは制度によって確認が必要です。
Q. 先進的窓リノベとみらいエコ住宅で、同じ窓工事に両方申請できますか? A. できません。同一工事箇所への重複申請は認められていません。窓工事はどちらか一方で申請します。どちらに計上した方が補助額が大きくなるかを、業者と一緒に確認しましょう。
Q. 補助金を受け取るのは施主(住宅オーナー)ですか?業者ですか? A. 制度によって異なります。給湯省エネはポイント還元型(施主への戸建て補助)など仕組みが複雑な場合もありますが、いずれにせよ最終的な還元は施主側に向く設計になっています。業者に確認すると「どうやって施主に還元するか」を説明してくれるはずです。
Q. 申請は自分でできますか? A. できません。いずれの制度も、工事を行う「登録業者(施工者)」が代理で申請する仕組みをとっています。住宅オーナーが直接申請する方法はないので、登録業者に依頼することが補助金を受け取る唯一の方法です。
リフォーム・リノベーションを検討している方へ
リフォームは、設備や材料の定価こそありますがその価格はリフォーム会社(販売施工会社)の仕入れ力に大きく左右されるところがあります。
いざ見積もりを取ってみると、定価で比べると高かった製品の見積もりと安い製品の見積もりとほとんど価格差がない、あるいは安く出るなんていうこともあったりします。
実際に私も諦めかけていた樹脂製窓サッシの見積もりをダメもとで相見積もりで取ってみたところ、複合サッシより安い価格で設置できることがわかったということがありました。
これからリフォーム・リノベーションを検討される方は少し手間でも、ぜひ複数社で相見積もりを取ってみることをお勧めします。
