「窓の断熱リフォームを考えているんですが、二重窓とガラス交換、どちらがいいですか?」
この質問、中古住宅のリフォーム相談でものすごく頻繁に出てきます。どちらも「窓の断熱を改善する工事」として紹介されることが多く、業者によっても提案が違うので、迷うのは当然です。調べれば調べるほどわからなくなってくる、というパターンも少なくありません。
結論を先に言ってしまうと、中古住宅のアルミサッシを対象にするなら、内窓(二重窓)設置が断熱・防音の両面で圧倒的に有利です。特に2026年度の先進的窓リノベ補助金は内窓に手厚く設計されており、費用対効果の差はさらに開いています。
ただし「複層ガラス交換に意味がない」かというとそうではありません。既存サッシの状態や目的によっては、十分な選択肢になります。この記事では両者を断熱性能・防音性・費用・補助金・リフォーム実務の観点で比較し、どちらをどんな状況で選ぶべきかを整理します。特に中古住宅を購入してこれから断熱リフォームを考えている方に役立つ内容を意識しました。
そもそも何が違う?二重窓と複層ガラス交換の仕組み
まず、言葉の整理をしておきます。
「複層ガラス(ペアガラス)」というのはガラスの構造の話で、2枚のガラスの間に空気層やガスを封入したガラスのことです。断熱性を高めるために開発されたガラスで、一般的な単板ガラス(1枚ガラス)より熱が逃げにくい特性があります。
「二重窓(内窓)」は窓の構造の話で、既存の窓の内側にもう一枚窓を追加することで窓が二重になった状態を指します。
この2つは全く別の概念です。「複層ガラス交換」は、既存サッシに入っている単板ガラスを複層ガラスに差し替える工事。サッシ(枠)はそのまま残ります。「内窓設置(二重窓)」は、既存サッシの内側に新たなサッシごと窓を追加する工事で、既存窓には一切手を加えません。
この違いが、性能差の根本になっています。

上の図のように、複層ガラス交換はガラスのみが変わり、サッシ部分(枠)は変わりません。内窓設置は、ガラスもサッシも新たに追加されるため、既存のアルミサッシと新設の樹脂サッシの間に大きな空気層が生まれます。この空気層の幅と質が、断熱・防音の差に直結しています。
断熱性能の違い:数字で見ると差は歴然
窓の断熱性能は「熱貫流率(Uw値)」という数値で表します。数値が小さいほど断熱性が高く、外の寒さ・暑さが室内に伝わりにくいことを示します。単位はW/(m²K)です。
典型的なアルミサッシ+単板ガラスの窓は、Uw値が5〜6 W/(m²K)前後というのが一般的な水準です。これを一般的な複層ガラスに交換した場合、Uw値は2.9〜3.5 W/(m²K)程度に改善されます。確かに単板よりは良くなりますが、ここで注意していただきたいのが「アルミサッシの問題」です。
アルミは熱伝導率が非常に高い素材です。ガラス部分をいくら高性能にしても、枠(サッシ)のアルミを通して熱が逃げ続けます。これを「熱橋(ヒートブリッジ)」と呼びます。アルミサッシのまま複層ガラスに交換しても、この熱橋は解消されません。冬に窓枠が結露するのはこのためです。ガラス面の性能を上げても、枠から逃げる熱が残るわけです。
一方、内窓設置の場合はどうでしょうか。内窓には一般的に樹脂サッシが使われます。樹脂の熱伝導率はアルミの約1000分の1という低さです。既存のアルミサッシは外側に残りますが、内窓の樹脂サッシが断熱の役割を担い、その間の大きな空気層と合わさることで、窓全体としてのUw値は1.4〜1.5 W/(m²K)程度(先進的窓リノベのSグレード相当)まで下げることが可能です。
アルミ単板ガラスと比べると4〜5倍の断熱性。複層ガラス交換(アルミサッシのまま)に対しても、内窓設置は約2倍の断熱性を発揮します。この差は、冬の朝の室温、暖房の効き、光熱費に直接影響してきます。
結露の問題にも触れておきます。結露は室内の暖かい空気が冷たい窓面に触れることで起きます。内窓設置後は、室内側の窓(内窓)の温度が室温に近くなるため、結露が大幅に抑制されます。複層ガラス交換でもガラス面の結露は減りますが、アルミサッシのまま交換した場合、枠部分の結露は解消されないことがほとんどです。
防音性能の違い:見落とされがちな大きな差
断熱の話に隠れがちですが、防音性の差も相当あります。
内窓設置は、既存窓と内窓の間に空気層が生まれます。窓の間隔が広いほど防音効果は高まり、一般的な施工では7〜10cm程度の空気層が確保されます。この空気層が音の伝達を大幅に遮断します。特に中高音域の遮音効果は顕著で、道路沿いや線路近くの中古住宅では「窓を閉めたら静かになった」という体験として実感しやすいです。
一方、複層ガラス交換の防音効果は期待ほど高くないことが多いです。複層ガラスには「共鳴透過」と呼ばれる現象があります。2枚のガラスの間の空気層が共鳴し、特定の低音域の音が抜けやすくなるのです。結果として、防音性能は単板ガラスとほぼ変わらないか、場合によっては特定の周波数帯で音が通りやすくなるケースもあります。
交通騒音は低音域の成分も多く含まれています。複層ガラスに換えたのに「思ったより静かにならなかった」という感想が出やすいのはこのためです。防音目的が強い場合は、内窓設置が圧倒的に有利です。
費用相場の比較
費用だけで見ると、複層ガラス交換の方が安くなります。
複層ガラス交換の費用目安は、窓1箇所あたり3〜15万円前後です。工事時間は1〜2時間程度と短く、日常生活への影響も最小限です。ただし、真空ガラスなど高性能品を選ぶと費用は上がります。また、既存サッシに複層ガラスが収まる構造かどうかも確認が必要です。

内窓設置(Sグレード)は、窓1箇所あたり6〜25万円前後が相場です。工事時間は半日〜1日程度で、複数箇所を同時施工すると効率が上がることが多いです。
ここで補助金の話が絡んできます。2026年度の先進的窓リノベ事業では、内窓Sグレードへの補助は手厚く設計されており、工事費の50%前後が補助される水準の定額補助が受けられるケースが多いです。補助金適用後の実質負担を考えると、内窓Sグレードと複層ガラス交換の費用差は大幅に縮まります。補助金を活用するなら、「支払い総額」ではなく「実質負担額」で比較してください。
先進的窓リノベ2026補助金:制度変更で選択肢が変わった
2026年度の先進的窓リノベ事業では、補助対象のグレード基準が変更されています。この変更が、工法選択に直接影響します。
内窓設置の場合は、Sグレード(Uw値1.5以下)以上が必須条件になりました。2025年度まで対象だったAグレード(Uw値1.9以下)の内窓は、2026年度から補助対象外になっています。一般的な複層ガラスを使った廉価な内窓では、補助が受けられない可能性があります。内窓を補助金対象にしたいなら、Low-E複層ガラスを採用したSグレード以上の製品であることが前提です。
ガラス交換の場合は、Aグレード(Uw値1.9以下)以上が引き続き対象です。内窓より性能基準がやや緩く設定されています。ただし、既存サッシとガラスの組み合わせによって性能グレードが決まる仕組みのため、アルミサッシ×複層ガラスの組み合わせでは対象グレードに届かないケースもあります。見積もり段階で業者に確認が必要です。
補助金を使って断熱改修するなら、内窓Sグレードが最もバランスの良い選択肢です。コストは複層ガラス交換より高いですが、断熱性・防音性・補助額のすべてで上回ります。
補助金制度の全体像については省エネリフォーム補助金 徹底比較【2026年版】もあわせて確認してみてください。3制度の使い方とシミュレーションをまとめています。
内窓の製品選びについては、このサイトのインプラス vs プラマードU(ウチリモ)比較記事が参考になります。LIXILのインプラスとYKK APのウチリモ(旧プラマードU)はどちらもSグレード対応製品があり、先進的窓リノベ2026の補助対象になっています。
リフォームで選ぶときの考え方
「内窓か複層ガラス交換か」は、既存の窓の状態によって答えが変わります。ここが実務で最も大事なポイントです。
既存がアルミサッシ+単板ガラスの場合(築25年以上の中古住宅に多い)は、内窓設置が圧倒的に有利です。アルミサッシに複層ガラスを入れても、サッシの熱橋は解消されません。内窓を追加することで樹脂サッシが加わり、断熱性が大幅に改善されます。補助金の恩恵も最大限に受けられます。
既存がアルミ樹脂複合サッシ+単板ガラスの場合は、複層ガラス交換もある程度有効な選択肢になりえます。アルミ樹脂複合はサッシ自体の断熱性が一定あるため、ガラスを高性能化することで相応の改善が見込めます。ただし断熱・防音効果を最大化したいなら、それでも内窓設置の方が上です。
カバー工法(サッシごと交換)との使い分けも理解しておくと判断の幅が広がります。カバー工法は費用が大きく(1箇所あたり10〜30万円前後)なりますが、窓全体を最新の断熱窓に更新できます。サッシが古くなり開閉に不具合が出ている場合や、見た目も含めてリフレッシュしたい場合に向いています。内窓設置はカバー工法より安価でありながら断熱性は十分改善できるため、「まず内窓から始めて、後にカバー工法に進む」アプローチも合理的です。
予算が限られている場合は、まず寒さ・結露が深刻な部屋(寝室・リビング)の窓から優先して内窓を設置し、徐々に範囲を広げていくのが現実的な進め方です。補助金は「1回の工事で5万円以上の補助」が条件なので、数箇所まとめて申請する方が効率的です。
こんな人は内窓がおすすめ、こんな人は複層ガラス交換も選択肢
内窓(二重窓)設置がおすすめな人
- 築25年以上の中古住宅を購入し、アルミサッシ+単板ガラスの窓が多い
- 冬の寒さ・結露が深刻で、断熱性を大幅に改善したい
- 騒音も気になっていて、断熱と防音を同時に解決したい
- 先進的窓リノベ2026の補助金を最大限活用してリフォームしたい
- 大掛かりな工事を避けたい。工事時間が短く、日常生活を乱したくない
複層ガラス交換を検討できる人
- 既存サッシがアルミ樹脂複合以上で、ガラスのみを交換して断熱を改善したい
- 窓の開け閉めを2回にしたくない(二重窓の操作感を避けたい)
- 内窓を設置するための窓台スペースが確保できない
- 防音よりも断熱を最優先していて、そこまで大きな性能向上は求めていない
まとめ
2つの工法を5つの軸で比較してきました。整理すると、中古住宅の断熱リフォームという文脈では、内窓設置の優位性がはっきりしています。
断熱性能はSグレード内窓でUw値1.4〜1.5 W/(m²K)を達成でき、アルミ単板窓の4〜5倍の性能です。防音効果も大きく、2026年補助金の対象として最も手厚い補助が受けられます。複層ガラス交換は工事が手軽で費用も抑えられますが、アルミサッシの熱橋は残り、防音効果も期待しにくい。補助金も性能グレードの差から内窓より少なくなりがちです。
一方で「どちらが正解か」は、既存窓の素材・状態と目的次第です。まず検討の第一歩として、リフォーム業者に既存窓のサッシ素材と状態を確認してもらってください。それが「内窓にするか、複層ガラス交換でも十分か、あるいはカバー工法まで踏み切るか」を判断する根拠になります。
よくある質問
Q. 内窓と複層ガラス交換、どちらが結露を抑えられますか? A. 内窓設置の方が結露を大幅に抑えられます。複層ガラス交換でもガラス面の結露は減りますが、アルミサッシのまま交換した場合、サッシ(枠)部分の結露は解消されないことがほとんどです。内窓の樹脂サッシは熱伝導率が低く、室内側の窓面・枠の温度が室温に近くなるため、結露が起きにくくなります。
Q. マンションでもガラス交換・内窓設置はできますか? A. マンションの場合、窓は共用部にあたるため、サッシ本体の交換や既存ガラスの交換は管理組合の許可が必要なケースが多いです。一方、内窓設置は既存窓の「内側」への取り付けなので専有部内の工事として扱われ、多くのマンションで個人の判断で実施できます。管理規約や管理組合への確認は念のため行ってください。
Q. 先進的窓リノベの補助金はガラス交換でも使えますか? A. 使えます。ただし、2026年度はAグレード(Uw値1.9以下)以上の製品が対象です。一般的な複層ガラス製品の中にも対象外になるものがあるため、業者と確認が必要です。内窓の場合はSグレード(Uw値1.5以下)以上が条件なので、ガラス交換より基準が厳しくなっています。
Q. 内窓を設置すると部屋が狭くなりますか? A. 取り付け厚み分(2〜7cm程度)は出っ張りが生じます。特に掃き出し窓では床付近に出っ張りが出ますが、一般的には日常生活への影響はほとんどありません。窓台のスペースによって設置できる内窓の種類が変わることがあるため、施工前に採寸と現地確認が必要です。
Q. 内窓が取り付けられない窓の形はありますか? A. 引き違い窓・縦すべり出し窓・FIX窓(はめ殺し窓)などほとんどの窓形状に対応しています。特殊な形状(円形窓・三角窓など)や、窓台の幅が極端に狭い場合、出窓の一部形状では取り付けが難しいことがあります。事前に業者に採寸・確認を依頼するのが確実です。
リフォーム・リノベーションを検討している方へ
今日ご紹介した窓サッシなどの住宅設備は、定価こそありますがその価格はリフォーム会社(販売施工会社)の仕入れ力に大きく左右されるところがあります。
いざ見積もりを取ってみると、定価で比べると高かった製品の見積もりと安い製品の見積もりとほとんど価格差がない、あるいは安く出るなんていうこともあったりします。
実際に私も諦めかけていた樹脂製窓サッシの見積もりをダメもとで相見積もりで取ってみたところ、複合サッシより安い価格で設置できることがわかったということがありました。
これからリフォーム・リノベーションを検討される方は少し手間でも、ぜひ複数社で相見積もりを取ってみることをお勧めします。
