中古住宅のリフォームで「断熱材を入れ替えたい」と考えたとき、真っ先に候補に上がるのがセルロースファイバーとグラスウールです。グラスウールはコストパフォーマンスと施工業者の豊富さで圧倒的なシェアを誇り、セルロースファイバーは調湿・防音で高い評価を得ています。
どちらが優れているかは一概に言えません。結露が気になる築古住宅ならセルロースファイバー、コストを抑えて広範囲を施工したいならグラスウール——それぞれに明確な得意分野があります。本記事では8つの判断軸で両者を比較し、中古戸建てのリフォームで後悔しない選択ができるよう解説します。
セルロースファイバーとグラスウール、根本的な違いとは
セルロースファイバーの特徴
セルロースファイバーは古紙(新聞紙など)を主原料とするリサイクル断熱材です。繊維が複雑に絡み合った構造が特徴で、専用の吹き込み機で壁・天井・床下の空間に充填します。繊維自体が吸湿・放湿する調湿機能を持つため、壁内に侵入した湿気を吸収し、乾燥時に放出します。
難燃処理(ホウ酸系)が施されており、単体では燃えにくい特性があります。ただし石膏ボードによる被覆は推奨されます。熱伝導率(λ値)は**0.040 W/(m·K)**程度で、グラスウール高性能品には熱伝導率でわずかに劣るものの、調湿性能と吸音性能では大きなアドバンテージを持ちます。
グラスウールの特徴
グラスウールはガラスを繊維状にした無機質の断熱材で、国内の新築・リフォーム市場で最もよく使われます。バット(マット)状に成形されているため、壁の間柱間や天井の根太間に切り込んで充填する「充填断熱」に向いています。
密度によって10K・14K・16K・24Kなどグレードがあり、高性能16K(λ=0.038)や高性能24K(λ=0.036)は高い断熱性能を発揮します。ただし調湿機能はなく、壁内に結露が生じやすい環境では防湿シートとの併用が必須です。
断熱性能(λ値)を正しく比較する
λ値(熱伝導率)は数値が小さいほど断熱性能が高い指標です。
| 断熱材 | λ値 |
|---|---|
| セルロースファイバー | 0.040 W/(m·K) |
| グラスウール 10K | 0.050 W/(m·K) |
| グラスウール 高性能16K | 0.038 W/(m·K) |
| グラスウール 高性能24K | 0.036 W/(m·K) |
数値だけ見ると高性能グラスウールが有利ですが、断熱性能は厚みと施工精度の掛け算であることを忘れてはいけません。
セルロースファイバーは吹き込み充填のため、壁内の隅々まで均一に入ります。一方グラスウールは切り込み・留め付けの精度が作業員に左右され、わずかな隙間が熱橋(ヒートブリッジ)となって実効性能を落とすことがあります。
断熱等級6・7を目指す高性能改修であれば高性能グラスウールの数値メリットが生かせますが、一般的な断熱等級4〜5のリフォームならセルロースファイバーの均一充填のほうが実測値で上回るケースも多いです。

内断熱・外断熱の工法選択についての基礎は「外断熱 vs 内断熱 リフォームでの比較」も合わせてご覧ください。
リフォーム視点での8項目比較
1. 調湿性——セルロースファイバーが圧倒的に有利
築20〜30年の中古住宅は、防湿層(防湿シート)が施工されていないか、劣化していることが多いです。そこにグラスウールを入れると、壁内結露のリスクが高まります。
セルロースファイバーは繊維が吸湿・放湿するため、防湿シートなしでも壁内結露を抑制できます。デコス株式会社の施工では「内側防湿シートなし」で施工可能なケースも多く、築古住宅のリフォームと相性が抜群です。
一方グラスウールは無機素材のため調湿機能がなく、防湿シートの施工が必須。既存の壁を大きく解体しない部分改修では防湿シートの確実な施工が難しく、結露リスクを管理しきれない場面があります。
2. 吸音・防音性能——セルロースファイバーが優位
繊維の密度と複雑な絡み合いが音を吸収するため、セルロースファイバーは生活音(足音・話し声・外部騒音)の低減に高い効果を発揮します。屋根裏への吹き込みで雨音が大幅に改善したという施主の声も多く聞かれます。
グラスウールも高密度品(16K以上)では一定の吸音効果がありますが、セルロースファイバーほどの密度は出しにくく、防音性能では劣ります。「とにかく静かな家にしたい」という要望があるならセルロースファイバーを選ぶ理由の一つになります。
アクアフォームとグラスウールの吸音性・気密性比較は「アクアフォーム vs グラスウール 断熱材比較」もご参照ください。
3. 耐火性——両者ともに石膏ボード被覆が必要
セルロースファイバーはホウ酸系の難燃処理が施されており、単体での燃焼性は低いですが「不燃材料」ではありません。グラスウールは無機素材で単体は燃えませんが、バインダー(樹脂)や防湿シートが可燃であるため、やはり石膏ボードによる被覆が求められます。
準耐火構造・耐火構造が要求される場合はロックウールが有力候補となりますが、一般的な木造住宅のリフォームでは両者とも標準的な仕様(石膏ボード12.5mm以上)で対応可能です。
4. リフォーム費用目安
延床面積100m²の全面断熱改修(充填断熱)で試算すると次の通りです。
| 断熱材 | 費用目安 |
|---|---|
| セルロースファイバー | 80〜160万円 |
| グラスウール(高性能品) | 50〜100万円 |
セルロースファイバーは専用の吹き込み機械と習熟した職人が必要なため、材工費が高くなります。グラスウールはDIY施工事例もある一方、リフォームでは専門業者に依頼するのが一般的で、グラスウールのほうが1.5〜2倍ほど費用を抑えやすいです。
ただし費用対効果という観点では一概に差がつきません。セルロースファイバーの調湿効果によって結露補修・カビ対策費用が不要になれば、長期的なランニングコストで逆転することもあります。
5. 施工業者の選びやすさ——グラスウールが有利
グラスウールは全国の工務店・リフォーム会社が対応しており、相見積もりを取りやすいのが大きな強みです。
セルロースファイバーは専門業者・代理店が限られており、地方では施工業者が数社しかいないエリアもあります。「デコス認定施工業者」や「セルロースファイバー施工店」をまず探せるかどうか確認してから比較検討を進めるのが失敗しないコツです。
6. 部分改修との相性——どちらも対応可
既存壁を剥がさずに天井裏や床下から吹き込むセルロースファイバーは、スケルトン化しないスポット施工と特に相性が良いです。壁内へも小孔を開けて充填する工法があり、内装を大きく傷めずに断熱改修できます。
グラスウールも壁・天井・床のあらゆる部位に対応しており、リフォーム時の部分解体に合わせた柔軟な施工が可能です。
7. 環境配慮——セルロースファイバーがわずかに上
セルロースファイバーは回収古紙(新聞紙など)が主原料で、製造エネルギーも低く、高い環境適性があります。グラスウールもリサイクルガラスを原料に使用しており、環境負荷は比較的低い素材です。
「エコな家づくり」を重視するなら、原料のリサイクル率・製造エネルギーともにセルロースファイバーに分があります。

「どちらを選ぶか」判断フローチャート
以下のポイントに当てはまる場合、選択肢が絞り込まれます。
セルロースファイバーを優先すべきケース
- 築20年超で防湿層が不明 or 劣化している
- 壁内結露・カビのリスクを徹底的に下げたい
- 雨音・生活音など防音性能を重視している
- 環境配慮・エコ素材にこだわりがある
- 天井裏への部分吹き込みを先行したい
グラスウールを優先すべきケース
- 断熱改修のコストをできるだけ抑えたい
- 相見積もりを多く取って費用を比較したい
- スケルトンリノベで壁内を全て解体して施工する
- 施工業者がセルロースファイバー未対応エリアに住んでいる
- 断熱等級6〜7の高性能品(高性能24K)を使いたい
よくある質問
Q. セルロースファイバーはグラスウールより断熱性能が低いのですか?
A. λ値(熱伝導率)の数値では高性能グラスウールが若干有利ですが、実際の断熱効果は施工精度と充填密度に大きく左右されます。セルロースファイバーは吹き込み充填で均一性が高いため、設計性能と実効性能の差が小さい傾向があります。目標断熱等級や工法との組み合わせで総合的に判断することが重要です。
Q. セルロースファイバーは価格が高いですが、費用対効果はどうですか?
A. 初期費用はグラスウールの1.5〜2倍程度かかります。ただし調湿効果による壁内結露の抑制は、長期的なカビ・腐朽への対策コストを削減します。また防音性能向上による生活の質の改善も含めると、築古住宅への投資効果は十分に見込めます。自治体の断熱改修補助金(省エネ住宅ポイントなど)を活用すると実質負担を減らせる場合があります。
Q. グラスウールのリフォームで結露リスクを下げる方法はありますか?
A. 防湿シートを室内側に正確に施工し、気密テープで端部を完全にふさぐことが基本です。ただし既存壁を剥がさない部分改修では防湿シートの施工が難しいため、その場合はセルロースファイバーやEPS(ビーズ法ポリスチレンフォーム)など透湿性能のある断熱材を検討するのも有効です。
Q. 天井裏だけ先行してセルロースファイバーを入れることはできますか?
A. 可能です。天井裏への吹き込みは小屋裏収納の床下地から施工でき、壁の解体が不要なため費用を抑えた部分改修として人気があります。夏の輻射熱を大きく軽減できるため、費用対効果が高い施工箇所の一つです。
Q. 断熱等級6・7を取得するにはどちらが向いていますか?
A. 断熱等級6・7はUA値0.46〜0.28以下という高い基準が要求されます。この水準ではλ=0.036の高性能グラスウール24Kを厚く充填する工法が計算上は有利ですが、実際には断熱材の種類よりも施工精度・気密性(C値)・熱橋対策のほうが重要です。高断熱改修を目標とする場合は外断熱との組み合わせも含め、設計者・施工業者と詳細に検討してください。
まとめ:中古住宅リフォームでの選び方
セルロースファイバーとグラスウールの比較をまとめると次のとおりです。
調湿・防音を重視するなら → セルロースファイバー 築20〜30年の中古住宅で防湿層が不確かな場合や、音環境の改善も求めるケースでは、セルロースファイバーの繊維調湿と高密度吸音が大きな差になります。費用は高めですが、結露リスクを根本から下げる効果は長期的に価値があります。
コストバランスと施工業者の選択肢を重視するなら → グラスウール スケルトンリノベや新規間仕切り壁への施工では、高性能グラスウールが最もコストパフォーマンスよく断熱性能を引き上げられます。対応業者が多いため相見積もりが取りやすく、補助金申請の実績も豊富です。
どちらの断熱材を選ぶにせよ、断熱改修は工法の選択(外断熱か内断熱か)と組み合わせて計画することが重要です。内断熱のみで対応するのか、外断熱との組み合わせを検討するのかによって、最適な断熱材も変わります。
